そのまま颯爽と女子トイレから出ようとしていた玲だったが、不意に足を止めて背後にいる鈴理に言う。 


守るという力は手腕の強さで決まるものじゃない、相手を思いやる気持ちの度合いで決まるものだと。
 

「君の彼氏は」


本当の意味で君への思いの強さが強い、それを二度目ましての時に見せ付けられてしまった。

そこまで愛されていることが、今じゃ妬ましい。

ああ妬ましかった、正直に言おう。

嫉妬した。
 

「彼はどんなに受け身を取っていても、根っこでは男を貫いているのかもしれないな。
それが君の隙であり弱点でもあるのかもしれない。表向きの王子なら、すぐにポジションが奪えそうだ」


「…弱点」



「長い付き合いだからこそ、君に教えておいてやる。今の君じゃ無理だ。君じゃ豊福の王子にはなれない。だって君は彼に守られているのだから」
 
 
 
凛と澄んだ声音が女子トイレの静寂を切り裂く。


向こう側から聞こえてくる賑わう店内のBGMさえ、今の女子トイレには届かない。届かなかった。 

 

⇒04