「助けてくれた皆に俺がお礼をするっす。高い物は奢れないっすけど、ジュースでも奢りますから、それを飲んで皆一緒に仲良く円満に時間を過ごしましょう。そうしましょう。えーっと、今いくらあったか……、147円か」


そっか、ペットボトルは買えないか。

買えたとしても一人分か。


酢こんぶやチロルチョコレートは怒られるっすよね。

売店にも売ってなさそうだし。これを使うと今月、俺文無しになっちゃうんだよな。


滅多に金は使わないけど、でもいざって時には……いやいや恩にケチるな俺。
ちょっと勿体無いとか思うな、俺。


「ポテトチップスを一袋分買えるお金はあるから、それを皆で分けて食べる…、じゃ駄目っすよね。
だったら板チョコ…、助けてもらったのは鈴理先輩、御堂先輩、それにフライト兄弟の四人か。四等分じゃ小さいよなぁ。

……、……、あの親衛隊の皆さん。俺の身、いくらでなら買ってくれるでしょうか?

千円なんて贅沢は言いませんけど、切に五百円は欲しいっす。
買ってくれるならMにしてくれても構わないっす。寧ろMになれるよう頑張るっす」
 

もはや背に腹は変えられない、五百円が欲しい俺は親衛隊に交渉を求めた。
 

あぼーんな顔をする柳先輩と高間先輩は、息を吹き返したかのように「身売り?!」「しかも親衛隊に?!」口を揃えてツッコまれた。


だってこのままじゃ奢れないっすもん!
皆一緒に仲良く円満に時間を過ごしましょうができないですもん!

間を取って円満作戦がパァになるじゃないっすか!


軽い財布の中身と対面しては涙を呑む俺、このままじゃお礼ができないと嘆いて彼等に交渉を迫る。


「ベルト鞭でもなんでも耐えますから、俺に五百円を恵んでください。いえ、貸してください!」

「と、豊福! それでは助けた意味がないではないか! プラマイゼロ、いやマイナス! というか、僕のために身売りなんてっ、豊福…健気過ぎる」


「あほか、玲! こら空、あんたが追い詰められるほどの見返りは求めていないぞ! というか勝手に奢りを口にし出したのはあんたっつーか、話を脱線させたのはあんたっつーかっ。
身売りなんてあたしが許すかぁああ! 体は大切にしろー! あんたが身売りしていいのはあたしだけだぁあああ!」
 

鈴理先輩の怒声が教室中にエコーしたのは、この直後のことだった。


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