「空―――ッ!」



グッドでバッドタイミング、我が彼女の登場だ。
 

全力疾走で駆けつけてきてくれた鈴理先輩は「あんたの友達に」親衛隊に拉致られたことを聞いて飛んできたっ、と声音を張る。

ということはフライト兄弟が鈴理先輩を呼んだのかな。


一学年の廊下で拉致られたしな、俺。


目撃して、何かあるんじゃないかってSOSを先輩に要請したに違いない。

その証拠にフライト兄弟も後から用具倉庫に飛び込んでくる。
 

新たな登場人物が増えたおかげで、倉庫内は修羅場と化した。

「玲」なんであんたが此処に、表情を険しくする鈴理先輩。


「そんなことはどうでもいい!」


大喝破する御堂先輩は、こいつ等を片付けると握り拳を作った。


「豊福に手を出したこいつ等をっ、こいつ等を、僕は始末しなければならない! よくも豊福にっ…」

「あ、あぁああ御堂先輩っ、あの!」



「豊福にSMプレイをした挙句、Mにしようと鞭で調教したな! 僕の婚約者に対する無礼、この落とし前っ、きっちり付けさせてもらうからな!」



嗚呼っ、誤解を解かなければいけない人物が増えるんっすね。


こめかみに手を添える俺を余所に、怒気を纏った某あたし様。


「ほぉ」不敵に笑って、空気を絶対零度にする。



「誰の許可を得てSMプレイを…っ、あんた達に今一度、身の程知らずという言葉を教えてやろうか」



あたし様とプリンセスの怒気にその他諸々のギャラリーは顔面蒼白。直後、用具倉庫がカオスと化したのは言うまでもないだろう。