驚愕、瞼を持ち上げて光の向こうを見つめる息を弾ませて、ドア枠に手を添えている学ラン姿の彼女は、

「その手を退けてもらおうか」

息をつく間もなく地面を蹴った。

手前にいた高間先輩なんぞ脇目も振らず、俺の上に乗っている親衛隊達に向かって飛躍。


次に長い足を活かして後ろ回し蹴りを隊員の横っ腹に決めると、懐に入って鳩尾を、膝裏を狙ってバランスを、下に回り上に向かって顎を突いた。
 

あああぁ…なにもそこまでしなくても(見ているだけでも痛々しい!)、敵ながらつい同情してしまう俺は綺麗に着地するプリンセスを見上げる。
 

結った長い髪を靡かせ無駄ない動きで親衛隊の半分を伸した御堂先輩は、鋭い眼光でギッと相手を睨んでいたけれど、俺の視線に気付いて一変。

「豊福っ」大丈夫かと俺を起こしてくれる。


なんとか大丈夫だと微苦笑を返す俺のナリを見て、彼女はすまなかったと力いっぱい抱擁。

肩口に顔を押し付けられて、「え、ちょ」驚きかえる。


苦しい、息苦しいっす。

御堂先輩っ、苦しい!
てか、何故貴方様が此処に?!
 

必死に押し返そうとするんだけど、後頭部をガッチリホールドされているからそれが敵わない。

動揺する俺を余所に助けに来るのが遅れてしまった、彼女は怪我は無いかと頬を包んで顔を覗き込んでくる。


「こんなに砂埃で汚れてしまって…、擦り傷も見られる。怖い思いをさせてしまったな、もう大丈夫だから。僕が全力で君を守る」

「ま、守るなんて…、大袈裟っすよ。ちょっと親衛隊の人達にSMをされていただけで。だけど、ありがとうございますっす。おかげで痛い思いせずに済みました」


ががーん。

御堂先輩は大ショックを受けたような顔を作って、「SMプレイをされたのか?!」血相を変えてしまう。