「よし、指導と並行して我々が君を『M』に仕立ててやろう。君がMになれば此方も、同士が鈴理くんとお付き合いしているな、と幾分現実を受け入れられそうだしな」
「そ…、そうだ…。豊福空、お前、Mになれ!」
復活した高間先輩が起き上がって、鼻柱を擦りながら立派なMにしてやるとシニカルに笑う。
む、無茶苦茶なことを仰るんっすね!
俺、嫌っすよ!
痛いの超嫌いっすよっ、Nを貫き通したいイタイケボーイっすよ!
死んでもMになんてなりたくないっす!
んでもって『Mにする』は口実で、日頃の恨みつらみ鬱憤嫉妬を晴らす気でしょ! 目が物語ってるっすよ!
「嫌ですからぁあ!」
勘弁してくれと俺は嘆き、喚き、大暴れした。
バチンとベルトが地面で唸り声を上げる。
つい動きを止めて顔を強張らせる俺に、「Mの鉄則」まずはこれからする行為に対してありがとうございますと言うだぞ、柳先輩がご指導してくれる。
なるほどなるほど、じゃあ俺はMになれませんね。
ゼンッゼン有り難いなんて思ってませんもん!
「罵声も痛みも快感だと思い、甘受するべし。そうすることで君はスバラシイMの一歩を踏み出す」
「じゃあ俺は全力で後ずさるっす! イヤっすよ、こんなご指導いりませんっ! アイテテテッ、ちょ、そこ、手を緩めて下さいよ。痛いっす」
俺を押さえ込む手に異議申し立てするけど、「痛みはありがとうございますだって」と指摘される。
だーかーら、俺はMじゃないっすから有り難いなんて思いませんよ! はーなーせーっす!
「あまり暴れるようだと、高所に連れて行くぞ。豊福空」
高間先輩が暴れる俺に脅しを掛けてきた。
うぐっと言葉を詰まらせる。
俺の一番の弱点を…っ、卑怯も卑怯っすよ。高所に連れて行かれるなんて真っ平ごめんだし、ああもう俺の選択肢は一つしかないじゃないっすか。
本気で高所に連れて行かれそうだったから、俺は大人しくした。
一人対大勢なんて高が知れてる。



