前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


 
「うわっつ!」


俺はその場で生徒と一緒に転倒。余所見をしていたから、教室から出てくる生徒に気付かなかった。

完全に非は俺にあるから、「ごめんなさいっす!」慌てて謝罪。

刹那、痛い拳骨を頂いた。
ぶつかったのは大雅先輩だったようだ。

これまたナイス&バッドタイミング。


尻餅ついている彼は、カッコイイことに加害者の体をキャッチはしてくれている。


だけどあらまあ、美形が超憤った顔になっている。

いきなり何してくれるんだと青筋を立て、口元を引き攣らせる大雅先輩はこの俺にぶつかるとはいい度胸じゃねえかと胸倉を掴んできた。
 

ご、ごめんなさいっす。

でも悪気があったわけじゃないんだけど…、俺にも俺の事情とゆーものが…、だ、だけどやっぱりごめんなさいっす。

俺が悪いっすよね。
本当にごめんなさいっす。

おろおろ狼狽して謝罪していると、
  

「悪いって思うなら俺に慰謝料、ちゃーんと払えよな。ああちなみに、金なんざいらねぇ。体で慰謝料を払えよ、豊福」


「え゛?」目を点にする俺に、

「は?」これまた目を点にする大雅先輩。


今の台詞は大雅先輩がほざいたものじゃない。


明らかにトーンはソプラノ、女性のものであるからして?


今の台詞をほざいたのは…、揃ってぎこちなく視線を向こうに投げれば、ニッタァと笑っている愉快犯の川島先輩。


その隣では「素敵」っと頬を赤くしている宇津木先輩がいたりいなかったり。

絶句と引き攣り顔の両方を作り上げる俺等を余所に川島先輩が調子付いて話を続ける。


「『ってなわけだ、今から男子便所に行くぞ。拒否権なんざないからな』と、うち的にはこういう流れになると思うんだ。百合子」

「わたくし的には保健室というシチュエーションが宜しいですわ。そちらの方がベッドもございますし」

「バッカ、ヤり難い場所でヤるってのが萌えの醍醐味でしょーよ。スリリングも便所の方があるし」

「そう…ですけれど。ふふっ、でもどちらでもいいですわ。空さんの格好、絶対大雅さんが無理やりボタンを外し…、どうしてその現場を見られなかったのでしょう。残念ですわ。もう一度してくれないでしょうか」