けど、俺等の行為は大きな悲鳴によってピタリと止まる。
何事かと思って首を捻れば、向こうの木の陰からキィイイイ! っと、ハンカチを噛み締めて俺を睨む上級生二人。
『I Love Suzur !!』と印刷された鉢巻を頭に巻いているあの方々は鈴理先輩の親衛隊様じゃアーリマセンカ。
『お守り隊』から『見守り隊』に改名された親衛隊の長と副長がジトーッと俺に殺意を向けている。
「隊長っ、もう我慢なりませんっ。白昼堂々学内で我がアイドルとイチャイチャラブラブラブエンドレスっ、豊福空を始末したいであります!」
ギギッと木肌を引っ掻いているのは副隊長の高間先輩。青筋が大変な事になっている。
って、始末なんて物騒っすよ!
「泣くな高間。気持ちは同じだっ…、くそう、他の女と浮気しているくせにっ。尻軽な男め」
がじがじ、爪を齧っているのは隊長の柳先輩。そんなに齧っていると爪がなくなるんじゃ。
って、尻軽男って俺のことっすか! 失礼な!
各々涙を流して禍々しいオーラを俺に放ってくる親衛隊に俺は体を引いた。
なんであの二人、でがばめしてるんだよ。
しかも…、お…、男の嫉妬って超恐ろしいな。
ファンを怒らせるとロクなことがない。
向こうの言い分も分かるしな。
白昼堂々と学内でイチャモードを醸し出すのもっ、KYというかっ、って、す、鈴理先輩。顔が近い。
「せ、先輩。あそこに人が、しかも貴方様のファンがいるんっすけど…」
「見せつけてやればいいさ。微々たることを気にするくらいな」
いやいやいや、完全に殺意は俺に集中してるんっすけど! この後、俺、絶対に呼び出されてリンチとかに、ちょぉお、す、鈴理せんぱ―――…!!
―――…あーあ、だから言ったじゃないっすか。
あんま向こうの怒りを煽るとロクなことがないし、絶対に呼び出されるって。そう俺が呼び出されるんっすよ鈴理先輩。この俺が。
帰りのSHRを終えた俺は、廊下で仁王立ちしている親衛隊に深々と溜息をついて頬を掻いた。



