「先輩、俺に言ったじゃないっすか。俺のものになる、返品不可だって。言ったからには、あれ…、あれっす。先輩だって俺の所有物っす。
だから俺の気持ち、疑わないで下さい。それに俺が男ポジションを譲るのは貴方だけっすよ。何度も言ってるっす」
あーあ、傷付いたなぁ。慰めて欲しいなぁ。悪いと思うならキスして欲しいなぁ。
超わざとらしく呟いてみた。
不貞腐れてもみた。
甘えた素振りも取ってみた。
残念な事に草食受け身で定着している俺には、よっぽの心の準備ができていない限り、いきなり飛びついてキスをするなんて大それたことはできない。
これが俺なりの精一杯の甘えだ。
一変して頬を崩す先輩は「そうだな」今のはあたしが悪いよな、優しく髪を撫ぜてくる。
「お詫びしてくれないんっすか?」俺の甘えに、「ふふっ」彼女は笑声を漏らした。
「やはりリアルの方がいいな。どのように妄想しても、現物には敵わない。小さな行動でさえ可愛らしく思える」
「んー、可愛いはあんま嬉しくないっす。思われるほどの男でもないですし」
「あたしがそう思うのだから仕方がない。甘受しろ。空を可愛いと思うのはあたしだけで十分だしな」
その愛しむような、女性特有の可愛らしい表情に心が脈打った。大抵俺が見る笑みって攻めモードだからな。
笑みに心の準備ができたのかもしれない。
俺は上体を浮かして、触れていた右頬に口付けした。
「なっ」驚くあたし様に、「これでいいっすか?」してやったりと口角をつり上げて微笑を向ける。
珍しく頬を紅潮させる鈴理先輩は、ちょっぴり悔しそうに、だけど物足りないと言わんばかりの表情で俺を見下ろす。
きっとこの後、大人なキスを仕掛けられるんだろうなぁっと思って身構えていた俺。
勿論鈴理先輩もそのつもりで行動を起こそうとした。
俺の頭部に手が回ってきたんだから、起こすつもりだったんだろう。



