「却下、スリリングを味わいたい」
シニカルに笑う某令嬢は、解いた俺のネクタイを掴んで、そのまま獲物の両手首を一まとめにするために使う。
獲物は一切抵抗をしなかった。
その間にも獲物を捕らえた肉食獣は軽くキスを交わしてくる。
嗚呼、徐々に激しくなるキスはもう手馴れたもの。
それこそ度胸がないから舌を入れることはできないものの、彼女の舌を受け入れることは俺の日常の中で“当たり前”として確立している。
「鍵は掛けていないからな。声を出せば、すぐに生徒が来るぞ。見られたくないなら、せいぜいしっかりと声を抑えろよ。
あまり時間を掛けても、教師や警備員が巡回がするからな」
今更ノーとは言わせない、今日はあんたから誘ったんだから。
耳元で囁かれた。
分かってる、今日は俺が誘った。
認めるっす。
「早く先輩」誰かが来る前に…、急かしてみると、それなりのお誘いがあるだろうと注意を促される。
「相変わらず意地悪っすね」
そんなところも好きっすけど…、微苦笑を零して俺は相手の瞳を見つめた。
ねえ、先輩。
俺を抱い―…、……、エッホン、あー、仕切りなおして…。
先輩、俺を抱い…て…、だ…いっ…、だ…ダァアアアアアアアアア―――!
「―――…こんなの言えるわけないっすぅうううう! もう勘弁して下さいっ、俺が悪かったんですぅううう!」
読みかけの小説を投げ放りたくなったけど、これは彼女の大切な代物。
どうにか踏み止まり、俺はノートを閉じて「ごめんなさいぃいい!」オイオイと地面に伏した。
耳まで真っ赤に染め上げる俺に「あ、こら!」今からが本番じゃないか、なんでやめるんだとバンバン背中を叩き、鈴理先輩は続きを急かしてくる。
だけど、いや、ホンット無理っす。
勘弁して下さい。ごめんなさい。
もう駄目だと俺はギブアップした。



