前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



一度の行為では終わらないから覚悟しろよ。
 
ニンマリ笑う悪魔に俺はドッと汗を流し(てか先輩、俺等ヤったことないじゃないっすか。ナニそのヤったことあるような口振り!)、絶対に嫌だ、覚悟なんてできていないとかぶりを大きく横に振る。


んでもって弱々しく生唾を飲んで空笑いした後、なりふり構わず先輩の身を押し退けてBダッシュ。豊福空は戦闘から逃げ出した。


「あ、こら!」

ブレザー忘れてるぞ、というか逃げるとか論外だろ!

怒鳴る先輩がこれまた俺のブレザーを持ったままBダッシュで追い駆けてくる。

仲良く男子便所から出た俺等は、これまた仲良くいつものように鬼ごっこを始めた。


 
「空! そんな格好で廊下を走るな! あたしだけが見て良い姿だぞ、そのエッロイ姿は!」



「誰かが欲情したらどうする!」襲われるぞ! 阿呆なことをのたまう先輩に、

「先輩だけっすから!」誰が好き好んで平凡・普通・貧乏学生に欲情しますか! 目一杯叫んで俺はボタンを留めにかかる。
 

「ああもうっ、留め難いっ。先輩、追い駆けて来ないで下さいっす! ボタン留められないっす!」

「あんたが立ち止まればいい話だろ!」

「だっからっ、先輩が追い駆けて来るから止まれないんっす! 止まって下さい!」



「あたしはあんたが逃げるから追い駆けているだけだ!」


「俺は先輩が追い駆けて来るから逃げてるんっす!」
 
 

ドタバタ―、廊下を走りながら俺は必死にボタンを留める。
 

くっそう、なんで毎回まいかい、こっちが赤面するような恥ずかしい目に遭わないといけないんだ。

もっと普通に学生さんらしい、ピュアで甘酸っぱい恋人の時間を過ごしたいって思うのは俺の我が儘っすか?! 我が儘っなんすか?!


全力疾走プラス、余所見をしながら下から三つ目のボタンまで留める。

よし、残り三つ。
さっさと留めて先輩から逃げ切らないと貞操の危機っ、ドンっ!
 

緊急事態発生、緊急事態発生、生徒と衝突事故を起こしたようだ。