奪う?
ああ奪ってみせろ。
仮に奪えても、あたしは倍返しで奪ってやるさ。
空がどこに行こうが、必ず奪還してみせる。
それくらいの覚悟なくてなにが王子、なにが騎士。
手放す気などさらさらない。絶対に。
あんたがあたしと同じ“攻め女”と言うのならば、見せてみろ。その攻め魂とやら。
あたしは逃げも隠れもしない、真っ向から受けて立つ。
「あんたとは過去、様々なことで競り合ってきたが、かつてない勝負になりそうだ。面白くなってきた」
不敵返しといわんばかりの笑みを作り、鈴理先輩は背丈のある好敵手に向かって堂々反論。
かくしてあたし様とプリンセスは下校生徒の注目を浴びながら、互いに宣戦布告を交し合ったわけですが、(多分)当事者のひとりである俺、豊福空は状況に涙したくなったのです。
何故かってそりゃあ、今後の地獄が容易に想像できちまうからです。
この直後の地獄も怖いけど、これから降りかかる厄介事もスンゲェ怖いです。
嗚呼、やっぱり御堂先輩と関わるんじゃなかった。
ロクなことがないやい。
「豊福。テメェ、女運悪いんじゃねえの?
鈴理に玲、どっちも癖のある女だぞ。普通の女に好かれねぇってか、普通の女に縁がないよな。
それとも、ああいう奴等がテメェの女趣味か?」
俺の隣でしゃがみ込み、心底同情と感心を含む台詞を投げてくる大雅先輩は面倒な事になったぞっと脅してくる。
でも自分には関係のないとばかりに、面白がってくる彼は一言。



