屈んで視線を合わせてくる鈴理先輩は一笑を零して宣言。
「これはあたしに非がある。欲求不満だったあんたの気持ち、ちゃーんと理解してやらなかったからな。安心しろ、この後、とびっきり可愛がってやるから」
「ち、違いますってっ! こ、これにはワケが…、えーっと、事の発端はイチゴ大福を御堂先輩が下さってですね。それで、その」
「なるほど、あんたは食い物に釣られて他の女の前で脱いだのか。んーっ?」
いや、そういうことでもなくって!
オロオロうろたえる俺に、「いいさ」言い訳は後でゆっくりと体に聞けるもんな、ニッコニコで処罰を下してくる。
やばいっ、俺、彼女の逆鱗に触れたぞ。
オーラで分かる。
四日前の悪夢が脳裏に蘇って思わず身震い。
鳴かされる。ガチで。
「―――…鈴理、今の君じゃ僕には勝てない。必ず僕は君から姫を強奪してしまう」
目を細めて、上体を起こす鈴理先輩は「あたしが負ける?」それはどういう意味だと、クエッション。
そのまんまの意味だと御堂先輩は不敵に口角をつり上げ、
「僕は“婚約”を口にした」
それがどういう意味か分かるよな。
分からないわけないよな。
財閥界でそれがどのような重要性を持っているか、知らないわけじゃないだろう。
それだけ僕は本気だぞ。
君と競り合いたいから、当然それもあるが僕は生まれて始めて“男”に興味を持った。
異性に好意を持った。
僕自身も興味深いことだ。
ふふっ、三度目ましてなのに、僕ともあろう女が“男”に興味を持つとはな。
「本当に君が本気なら、婚約を心に決めた僕にその本気をぶつけてみせろ。男嫌いな僕は彼と家庭を作っても良いと思ってるぞ。
自分の許婚の件さえどうにもできない君は、どうだろうな? 自称王子さま?」
「言ってくれたな玲。そうか、そんなにあたしを敵に回したいのか。良いだろう、あたしの本気、あんたに見せてやる。婚約なんて目じゃないほどにな。
言っとくが、あたしは空のことになるとこれっぽっちも黙っちゃないぞ。
何故ならば、あたしは空の王子であり騎士(ナイト)。一度、あたしのものと言った以上、全力で守ると心に決めている」



