前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「空と噂になった時点である程度覚悟はしていたが、やはりきたか。男嫌いのクセに、あたしの彼氏を狙うとはいい度胸だ」


まあ、あんたに漬け込む隙などないが。

フフンと得意気な顔を作る鈴理先輩は余裕綽々アンドニヒルチックに笑みを浮かべた。

負けん気が強いのは御堂先輩も同じようだ。


それはどうかなと鼻を鳴らして腰に手を当てると、「豊福は僕に気を許してるんだぞ」どどーんっととんでもないことを言ってきた。

ナニを言う気っすかっ…、俺は貴方に気なんて全然っ。



「君がどれほどの時間を費やして豊福を落としたかは存じ上げないが、僕は彼と初日で噂になった。更に二度目ましてで、彼は僕を家に上げてくれた」


ゲッ、それは昨日の…。

青褪める俺の頭上で空気が急下降している。

「ほぉ」それで? 意気揚々と語る御堂先輩に続きを話してくれるよう促す彼女。

「聞きたいか?」

じゃあ話してやる、右の人差し指を立て、軽く宙に円を描きながらプリンセスは語り部に立つ。
  

「家に上げてくれるどころかお茶をしたんだ」


いやそれはっ、貴方様がイチゴ大福を持って来て下さったから家に上げてお茶を出しただけであって。
 

「しかも二人っきりのお茶だった」


親が仕事で留守だったんっすっ! 決して故意的じゃないっすよ!


「でこちゅーだってさせてくれたし」


無理やりだったっすよ! 俺は許可した覚え、爪楊枝の先ほどもないんっすからね!

 
「極め付けに、豊福自身から服を脱いでくれたんだ。二度目ましての相手に上半裸になるだなんて、とても大胆なお誘いだと思わないか? ははっ、君より僕の方が相性が良さそうだな」


~~~ッ、それは貴方様がいつまでも俺を女だと疑うからであっ「脱いだ。なるほどなぁ」
 

地を這うような声音が降りてきた。

悪寒を背筋に走らせながら目線を持ち上げてみる。大後悔。

一見女神のような笑みを作っているように見えるけど、見据えてくるその目は悪魔の眼そのもの。

「怒ってないぞ」ニコッと笑ってくるけど、絶対怒ってるっすよね!

その目は怒ってますよね!