「駄目っすよ」「あたしは好きなようにやる」
「もう十分でしょ!」「むっ、足りるわけないではないか!」
「キス以上はNGっす!」「あたしを誰だと思っているんだ。あたしがヤると言えばヤるんだ!」
「また我が儘を言う!」「生意気だぞ空、エロイ格好してるくせに」
「誰がこんな格好にしたんっすかああ!」「煩い煩いうるさーい!」
「うわわっ、力技とか卑怯っす!」「こら逃げるな!」
男子便所の狭い個室でヤーンな言い争いをした挙句、ドン、バンッ―!
攻防戦を繰り広げて大暴れした俺等はドアの鍵を解除した拍子に、折り重なるように倒れた。
先輩の下敷きになった俺はアイタタタッ、腰を強打した。
上に倒れてくる先輩はいきなりドアを開けるなって文句を言ってくるけど、しょーがないじゃないっすか。
咄嗟の判断で開けちまったんだから。
あ゛…。
俺は向こうから飛んでくる視線に気付いて、ぎこちなーく視線を流す。
そこには手洗い場で手を洗っている男子生徒二名。
顔も知らない男子生徒は気まずそうに愛想笑いをしてきた。
俺も愛想笑いを返す。
ははっ、ごめんなさい。公共の場でヤーんもどきしちまって。
沈黙が訪れる中、先輩だけが「個室に戻るぞ」グイグイシャツを引っ張ってくる。
こ、こんの気まずい雰囲気を感じながらも、まーだヤる気満々なんっすか!
「ほら、空」
「ほらじゃないっすぅうう! ナニ言っちゃってるんっすか! ヤらないっす!」
「あたしに逆らう気か? なるほど、上等だ。真剣にお誘いしているあたしを一蹴すれば、どうなるか、その身に刻んでやろう」



