前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



「身分なんて今の日本にはない。そう思っていました。財力の有無関係なしに、人は誰でも平等で公平なのだと綺麗事を片隅で思っていました」


でも鈴理先輩も大雅先輩も、財閥の令嬢に令息。未来を背負う財閥の二世、三世。
一般庶民の俺とは立場が違う。

財閥は後世のために自分達の地位の礎を確保しておかないといけないんっすよね。

俺は鈴理先輩が好きっす。でも大雅先輩も友達として好きっす。


二人とも大切だから、もしも家の都合で正式に婚約をしなければいけなくなったとしたら…、俺は身を引くしかないと思ってます。
 

今は俺も先輩も子供で冷たい社会に飛び出していないから、生ぬるい学内でぬくぬくと身分や家柄を考えずに過ごしていますけど、嗚呼、いつかはくるんっすね、お別れ。

想像もできないっすけど。
 

だけど綺麗事が好きでコドモな俺は思うんっす。

気持ちだけで通る世の中じゃない…、そんな殺伐な気持ちを抱いて荒んでいくのも真っ平ごめんなんだって。

俺のせいで“また”誰かの人生をメチャクチャにさせたくはないっすけど…、嗚呼、だけど俺だってそう簡単に譲れないんっす。この気持ち。

  
「いつか終わるその日まで、なんて考えたくない。
だからいつまでも続けられる関係にいられるよう努力しよう。まだ死ぬほど努力もしていないし、鈴理先輩の気持ちに疑心も持ちたくない。死ぬほど努力して、それでも駄目だったらその時はその時。
―…今は終わりを考える余裕ないんっす。未来に怯えて過ごすなんてヤじゃないっすか」


相手に吐露するようで、実は俺自身に言い聞かせる、自分の気持ち。
 
片隅では怯えてるんだ。身分・隔たりのことで。財閥交流会で見せ付けられた世界の違いに、俺はいつか終わりが来るんじゃないだろうかと近未来に怯えている。

草食は逃げることをモットーにしてるから、現実に逃げたくてしょうがない衝動に駆られる時もある。

でも逃げたって一緒だろ?
変わらないだろ?
無意味だろ?

だったら何かアクションを起こさないと。


「今だから言えるんっすけど、俺は最初こそ彼女から逃げまくっていました。だって受け男だとか言われた挙句、貞操を狙われるんっすよ?」