「豊福。さっきの行為だが…」
沈黙に耐えかねたのか、御堂先輩の方が先に話題を切り出してきた。
有り難いと思う反面、開口一番に出された話題に俺はゲンナリ。
よりにもよってさっきの“行為”についてっすか。
流してくれたら、俺も忘れるよう努めたのに。
謝罪されるんだろうと高を括っていた俺は、「気にしてないっすよ」素っ気無く突っ返した。
冷然とした態度に酷いと思うかもしれないけど、俺には彼女、彼女がいるんだ。分かっていてあんなことをしたんだから、これくらい当然だろ。うん。
ガシャン―、荒々しくソーサーにカップが置かれた。
瞠目する俺に「気にしろ!」御堂先輩が頬を紅潮させて、唸り声を上げる。
「僕は君に口説きやら抱擁やらキスやらしたんだぞっ!
もはや僕は認めるしかない…っ、僕は君を見ているとムラムラする。暴走する自分がいるっ。襲いたい僕がいるっ!
男にいたらんことをする僕なんてっ、僕なんてっ、くそう…、僕はもはや本物の男になるしかない。モロッコに行くしか。
男になったら少しは、この感情、どうにかなるのだろうか!」
そ、それいつも俺が使ってる台詞。取っちゃヤっすよ。
……とか阿呆なことを思っている場合ではない。
俺を見ているとムラムラ、暴走、襲う。いたらんことをしたいっ、それってどういう意味っすか!
仮にも男になって俺を襲おうとしたりしたら、それこそ宇津木ワールドっすからね!
彼女を喜ばせる世界にウェルカムっすからね!
呆気に取られていた俺は奇声を上げて半狂乱になるプリンセスを宥めながら、「気の迷いっすよ」きっと財閥界で噂を作っちゃったから、動揺しちゃって変に男に目覚めただけっす。
愛想笑いで助言。
実は俺がそうあって欲しいとは口が避けても言えず、どうどうと彼女に声を掛ける。
本当にそうなのだろうか、苦虫を噛み潰したような顔を作る御堂先輩は軽く吐息をついて手に持っていたイチゴ大福にかぶりつく。
なんと雄々しい食べ方。男らしいっす。



