前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



な、な、なんてことをしてくれたんっすか。

お、おぉおお俺、彼女持ちっ…、いや日本にはあまり馴染みのない文化かもしれないけど、キスを文化としている北欧等々ではキスをする場所によって意味がある。



オーストリアの劇作家。

フランツ・グリルパルツァーのキスによる格言はこうだ。



『手の上は尊敬のキス。額の上は友情のキス。頬の上は厚意のキス。唇の上は愛情のキス。瞼の上は憧憬のキス。掌の上は懇願のキス。腕の首は欲望のキス。さてそのほかは、みな狂気の沙汰』

 

ということは、俺が彼女にされたキスは“友情のキス”ということになるわけだけど。


そうは言っても日本にキス文化というものは浸透していない。

何処にキスされようとキスは“愛情”のキスに思われがちなわけだから、その、つまり、俺のされた行為は完全に仕置き対象になるってことでっ!
 

赤面どころか顔面蒼白する俺、同じようにやっと正気に戻った御堂先輩は自分のした行為に青褪めた。


所構わず、腕の中の俺を畳に落として(せめて静かに落としてください。一階の人に迷惑でしょう!)、ガタガタブルブルと体を震わせた後、玄関口でしゃがみ込み、


「僕はなんてことを」


相手は男なのに…、嗚呼、もう駄目だ。ズーンと落ち込んでしまった。
 

落ち込みたいのは、こっちっすよ御堂先輩っ!
 

どぉおおしよう、鈴理先輩に事が知れたらっ、嗚呼、違うんっすよ先輩。俺は被害者っす。

向こうが一方的に…ッ、だから仕置きだけは勘弁を。男の俺が鳴いてもマジキショイだけっすよ。ほんとっすよ。誰が聞いてもそう言いますっすよ。


半泣きの俺もその場でズーンと落ち込み、頭を抱えて脳内の我が彼女にひたすら弁解していたのだった。