通学鞄が音を立ててアスファルトに落ちる。
重たい凶器が俺の爪先に落ちたもんだから悲鳴を上げたくなったけど、それ以上に状況に悲鳴を上げたくなった。
なんで彼女が俺を見下ろしてるんでっしゃろう。
俺の背中を支えて、ジッと見下ろしてくる彼女はフッと笑みを浮かべて「可愛い人」と言い、そのまま抱き締めて肩口にグリグリと頭を擦りつけっ、ちょぉおお!
だ、駄目っすっ、俺には鬼で悪魔のような攻め女彼女っ…ゴッホン!
……ちょい嫉妬深くも可愛らしい攻め女彼女がいるんっす! こんなことされちゃあ、俺、また仕置きされちまうっす!
「せ、先輩っ…、唐突過ぎる行為はやめて下さい。放して下さいっす!」
「ッハ、ぼ、僕は今」
我に返った御堂先輩は俺の体をアスファルトに落とし(アウチ!)、「ありえない!」絶叫しながら物凄いスピードで俺から距離を置いた。
で、頭を抱えて電柱前にしゃがみ込む。ブルブルと体を震わせて、「男を口説いてしまった」いやそれどころか、抱擁してしまった。これも女性限定の行為なのに。
嗚呼、僕はなんてことを!
豊福は男だぞ男っ、分かってるではないか。いやでも認めたくない
世も末だと嘆いている御堂先輩は、「豊福なんて滅べばいいんだ」なんでか俺に責を擦り付けた。
……べつにそれでもいいっすけど、結局何しに来たんっすか貴方様は。
腰を上げて砂埃を払い、通学鞄を拾って肩に掛ける俺は改めて何の用だと御堂先輩に声を掛ける。
「僕が君に用なんてあるわけないだろ!」
理不尽にも逆ギレされた。
ということは、俺、帰っても良いかんじ?
だったら、さっさと退散するっすよ。
じゃ、さいならっす。
失礼しますの意味合いで軽く手を振り、俺はうんぬん呻いている御堂先輩をその場に置いてそそくさとトンズラ。
五秒後、「君は薄情だな!」盛大に文句を投げ付けられた。多分、剛速球並みだと思う。
「僕が此処にいるのは君に用事があるからに決まっているだろう、それくらい気付け、男のクセに!」



