前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



結果的に二歩分の距離がひらくわけだけど…、御堂先輩は俺の逃げ腰に眉根を寄せる。
 

ムキになったのか早足でコツコツコツっと俺に歩んで来た。

そうなるとビビリ草食も早足で後ずさり。ガタブルになりながら後ずさって、後ずさって、後ずさって、最後は踵返してBダッシュ。

草食の本領をいかんなく発揮してその場から離脱しようとアスファルトを蹴った。


が、先手を読まれていたらしく向こうの方が三秒早くダッシュして逃げる獲物の腕を容赦なく掴んだ。

さすがはスポーツ大好き人間、足が速い。
俺もそれなりに早い筈なのに…、あっという間の逃走劇、数秒で幕が下りちまった。なんて茶番!
  

「なんで逃げるんだ」


言うや否や、勢いに任せて民家のブロック塀に俺の体を押し付けてくる彼女。

あさっての方向を見やる俺は、遠目を作って空笑い。なんで逃げるって、そりゃあアータのせいで酷い目に遭ったからっすよ。

憤っている鈴理先輩に説明することもなく、大騒動を起こして噂まで作っちゃって。
 

フッ、情けないと言われようとも、男らしくないと言われようとも、女々しいとも言われようとも、俺は貴方から逃げますよ。もう仕置きはごめんなんで。


視線を向こうの宙に投げて、「何か俺に用っすか」鈴理先輩に用があるなら此処にはいませんよ、なーんてぶっきら棒に補足しつつ、取り敢えず用件を尋ねる。

素っ気無い態度かもしれないけど…、これくらい許されるだろっ…、あの時の仕置きを思えばさ!
 
 

ぺたぺた、ぺたぺた。お触り、お触り。
 

 
と、なにやらヤーんな予感がっ…、嗚呼、やっぱり。
 

一変してこめかみに青筋を立て小刻みに震える俺は、視線を戻してグッと握り拳を作る。


「うーん。やっぱり無いな」


貧乳でもこんなにぺったこんじゃないし…、ブツクサ呟いてカッターシャツの上から胸部をお触りお触りしている残念プリンセス・御堂先輩がそこにはいた。


まーだ俺を女だと思ってるんっすか?

どっからどう見ても、この声変わりを聞いても、制服からしても男じゃなうぁああ?!