「―…三日ぶりだな。豊福」
なんの前触れもなしに現れた宝塚の人…、じゃね、男装した学ラン姿の王子系プリンセスに三日前の悪夢を思い出し、物の見事に硬直するしかなかった。
そう…、三日前、俺と騒動を起こした…、というか一方的に騒動を起こして噂を作った挙句、自分だけトンズラしたキャツ・御堂財閥の一人娘、御堂 玲である。
暮れていく夕陽の刻、帰宅直前のことだった。
「み、御堂先輩…」
なんで貴方様が此処に、顔を引き攣らせる俺はアパート入り口前で佇んでいる彼女を凝視。
嗚呼、これを“奇襲”と呼ばずなんて呼ぼうか。
まさか自分のアパート入り口前にキャツが待ち構えているなんて、誰が想像するよ。
んでもって泣きたくなった。
だってこの人と関わったらロクなことがない。
現に俺、鈴理先輩に散々仕置きをされちまって。
ぶっちゃけ、御堂先輩と顔を合わせるだけでも辛い。
こうして向かい合っているだけで新着の黒歴史ともいえる忌まわしい仕置き光景を鮮明に思い出しちまって思い出しちまって。
うわあぁああ、赤面しそうだ。
あの時の仕置き、ホンット激しくて、マジトラウマになりそう。
声が出るまでやーんされちまった上に、これ以上ヤったら本能的にヤばいと思って何度も許しを乞うたとかアリエナイだろ。
受け男はマジで受け受けしくおにゃのこにッ…、思い出しただけでも泣きそうだ。
どんなに励まされても、気にするなって言われても、大丈夫だって優しくされても、こればっかしはそう簡単に立ち直れない。
俺、やっぱりどっかでリード権を持ちたいと思っているのかもしれないなぁ。
心中でグズッと涙ぐみながらも、表向きは驚愕の二文字を顔に貼り付かせたまま。
体いっぱいに夕陽を浴びている御堂先輩は手に持っていたスマートフォンを学ランの上衣ポケットに捻り込んで、佇んでいる俺にそっと歩んでくる。
悲鳴を上げそうになりながら、俺は反射的に後退り。
これも鈴理先輩の不謹慎な教育の賜物かもしれない。
一歩向こうが歩んで来ると、ズザザッ俺は大袈裟に三歩後ずさってしまう。



