「まったくもって小説以上に可愛らしかったんだ。彼氏の嬌声。やはりリアルは違うな。あんなに必死な空、初めて見たというか。
キスをすればするほど、溺れていくわ。声を出してくれるわ。乱れてくれるわ。『もう許してっす』と縋ってきた時には、本番に入ろうかと思ったんだ!」
ががーんっ、また先輩、人に言いふらして。
ショックを受ける俺は椅子から滑り落ちて、両膝をついた。
「お、おい」大雅先輩が腫れ物を触るような手つきで俺の肩に手を置いてくるけど、ずーんっと俺は落ち込んで涙ぐむ。
俺が落ち込んでいる理由はこれ。
ただ仕置きを受けたから落ち込んでいるわけではなく、あの日の仕置きで、その、あれだ、声が…、嬌声というべきなのか、喘ぎ声というべきなのか、とにかく声がな、出ちまったんだよ!
執拗なキスでっ、声がぁあああ!
ディープではありがちな息継ぎから漏れる声じゃなくてさっ、はっきりと鳴かされたんだよ、俺。
男のくせに鳴いちまったんだよぉおおお!
気色悪い?
ああ分かってらぁああ、本人がいっちゃん分かってらぁああ、悪いかドチクショウォオオオ!
ある程度、男の自尊心に対して執着がなくなっていた(諦めていた)と思ってたけどっ、こればっかしはちょっとっ、ちょっとぁああアアア!
だけど、しょーがないじゃないかっ。
目隠しをされていたんだからっ、キスの感触がいつも以上に感じちゃっ…、嗚呼、でも声が出ちまったのは自分でも予想外だった。
びっくりしたさ。
情熱的なキスされてる途中で脇腹を擦られてさ、ビックウっと体が反ったんだよ。
それだけでも驚きなのに、先輩、味を占めて、悪戯がちょいちょいっ…、上半身だけの悪戯だけで良かったとは思いつつ、それでもあらやだぁ、度の過ぎる悪戯に声が。
マジ、あの時はカオスだった。
体が反ったことに嬉々溢れさせる先輩が、調子付いてあれやこれやキスをしながら執拗に体を触ってくるもんだから、抗議しようとかぶりを振って口を開いた瞬間。
『せんぱっ。ちょっ、も、いい加減っ――ッ!』
悲しきことかな、声が出ちまって…、先輩も俺もカッチンと硬直の驚愕。



