でなければ、公の場でもあのように身分は隠さないだろう。
変わり者の鈴理が自分にさえ彼氏のことを隠していたのだから、彼女が彼をデリケートに扱っているのは分かっているが、それにしても、である。
意味深に吐息をつく玲は雨樋(あまとい)を恍惚に見つめ、瞬き。
あのような表情は彼に似合わないと思った。
同時に思い出すのは、何故だろうか、独占欲の凄まじさを物語っているキスマークだからの首筋。
鈴理も溺愛しているな。男に溺れるなんて情けない。そりゃあ吸ってみたくなるような肌ではあったが。自分も痕を付けてみた…い…、ちょっと待て。
「僕がなんでそのようなことを思わなければならないんだっ。そりゃあ腰を触りたいだのっ、お、おおぉお思ってしまったがっ…、普通はされたいと思うのが女であってっ。
いや僕は男にされるなんてジョーダンじゃないっ。
寧ろヤりたい側ああぁああ?!
な、なにを口走ってっ、僕もあれか、鈴理のいう攻め女だったのかっ。だがあいつは男だぞ男…っ、可憐も何もないっ! 男なんて滅べばいいんだ!」
じゃあ豊福が滅ぶということで?
……それは嫌だ、とてつもなく嫌だ。そして迷走している自分の気持ちがなによりも嫌だ。ガッデム。
身悶えている玲は、うんうん唸って寝転がりながら近くの柱を蹴りつけていた。
傍から見ればまさしく恋を煩っているおなごである。
やや荒々しい光景ではあるが、それも微笑ましい限り。
お目付けと夫妻はほろっと涙を滲ませて、感動に浸っていた。娘が男に恋をした。
嗚呼、なんて素晴らしい光景。
「成就させなければいけませんね、貴方様」
「ああ。そうだな、一子」
「微笑ましゅうございます。玲お嬢様」
お目付けと両親に見守られているなんぞ一抹も知る由のない、某プリンセスは今しばらく悶えていたのだった。



