こ、これは困った事態である。
幼い頃から何かと好敵手として対峙していた二人が、嗚呼、まさか恋愛に関してまで対峙することになるとはっ。
いやある意味、これは運命なのかもしれない。
何故ならば二人は好敵手、なにかと趣味が合う二人であるからして…、だからってうちの娘はなんでよりにもよって竹之内財閥三女の彼氏に目を付けてしまったのだろうか。
「困りましたね」
一子は夫に視線を流す。
男に興味を持っても、持ったその時点で失恋してしまっては、今以上に男嫌いになりうる可能性もある。
それだけは断固として阻止したいところだ。
失恋を契機に、本当に彼女を作ってしまいそうである。
唸り声を上げる源二は、「三女には許婚がいただろう?」問い返す。
なのに彼氏を作っているのか。それは竹之内家、二階堂家にしてみれば不味いことでは…、首を捻る源二に、蘭子はそうですね、と相槌を打つ。
「向こうの親御さまは、ただのお遊びだと考えられているようです。
けれど此方としては、折角の機会でございます。
どうにかして、玲お嬢様には男性と親密になって頂きたい。
なにより、私はお嬢様のお子様をお目に掛かりたいのです」
あのままじゃ彼女を作ってしまいそうでしまいそうで。
昨夜のパーティーに向かう途中でも、「養子を作れば良い」などと申し上げたのですよ。涙が出そうになりましたとも。
お目付けの嘆きに、夫妻もついつい嘆きたくなった。
娘はどうして、そう安易に物事を考えるのだろうか。
親心がまったく分かっていない。
そんな娘は今、どうしているのだ。
夫妻の疑問に、蘭子は一変して微笑。
お話するよりも、自分の目で見た方が宜しいですよ、と手招きして腰を上げる。
異存のない夫妻も当然腰を上げたのだった。



