現れたのは娘のお目付け・蘭子。

茶会中、無礼をお許し下さいと頭を下げてくる彼女に、どうしたのだと一子が物申す。


顔を上げた蘭子は、昨夜の財閥交流会で騒動があったのだと微苦笑。
それが思った以上に財閥界で噂立ってしまい、ご報告するために参ったのだと告げた。


途端に二人は顔を強張らせる。

娘が騒動を、しかも噂を作った。

嗚呼、なんという…、これまでも幾度となく男関連で騒動を起こしてきた娘。

大半が男嫌いだという理由で、暴言暴力騒動を起こしてきたのだが…、またしてもなのだろうか。


「なんてことでしょう」


眩暈を起こしそうになる一子、隣で源二が詳細を教えてくれるよう頼む。

予想に反して蘭子は穏やかな表情で、それこそ微笑ましそうにこうのたまった。


「少々言い方が荒くなるのですが、玲お嬢様が男の方を襲ったのです」


嗚呼、やはり暴力沙汰を起こしたのだ。一子は嘆いた。

源二はこめかみを擦り、これは娘と話し合わなければならないと苦言を漏らす。
 

「襲う意味が違いますよ」


蘭子はすぐさま、二人の解釈を否定し、別の意味で男を襲ってしまったのだと微笑。

三秒ほど間が空いた後、二人は目を剥いた。
それはもしやもしかすると、あれ、あれだろうか。いや、あれしかない。


ということは、え、まさか、娘が、あの男嫌いの娘が…、男を襲うとした。

天変地異でも起こるのではないだろうか!


絶句する御堂夫婦に、蘭子はクスクスと笑声を漏らしながら続きを話してくれる。


「私はその場にいなかったので、現場を見ることができなかったのですが…、それはそれは大騒動になったそうです。前触れはなかったものの玲お嬢様も、ついに男の方に興味を持ち始めたのでしょう。
今、自分のお気持ちが信じられなくて大変動揺してらっしゃいますが、それもまた微笑ましゅうございます」


「まあ、素敵! では、玲もついに…、貴方様」