普段だったらサービスしないけど、鈴理先輩の怒りを買った手前なので、
「分かりました。(セックス以外の)抵抗は極力しませんから」
最大の譲歩案を出した。
なんて俺、良い子だろう。
自分の身が危ないっつーのに、こんな阿呆なことを言うなんて。天国にいる実親も褒めてくれるに違いない。
……呆れてるかもしれないけど。
「早くしないと田中さんが帰ってきますよ」
時間も気にするよう促すと、ようやく先輩は仕方が無いと拘束プレイを諦めてくれた。
ホッと胸を撫で下ろすと同時に、彼女の体が密着。
息を呑む間もなく骨が軋むまで抱き寄せて、首筋に唇を落とし、そっと肌を吸ってくる。
緊張に体が強張ってきた。
いつもは視覚から攻められて、光景を目にし、ド緊張するけど、今回は聴覚と触覚だから。
ヤーんだもう、こうやって身悶える俺ってばおにゃのこみたい。
……とか思ってる場合じゃなく、これだけで結構、余裕がなくなってきたぞ俺。
「先輩、そこにいます?」
分かり切っているけど、なんとなく会話が欲しくなって俺は相手に声を掛ける。
笑声が耳に飛び込んできた。
「ああ。いるよ」丸び帯びた声質は、俺を酷く安堵させる。
ぎこちなく相手を抱き締めようと腕を持ち上げれば、「抵抗はしないんだろう?」しっかりとそれを制されてしまった。
いや、これは抵抗じゃなくて、純粋に恋人同士のスキンシップをしたかっただけなんっすけど。
「今日はパーティー、楽しめたか?」
不意に切り出される話題。
腰辺りに手が這ってくる。
ほんっと好きっすねぇ、男の腰なんて触っても楽しくないだろうに。触ってナニが楽しんだろう?
片隅で疑念を抱きながら、「ご馳走は美味かったっす」見たこともないご馳走ばっかりで驚いたと感想を述べた。
更に、「世界が違うっすね」俺は今日の感想を短縮して述べる。
俺と先輩の住む世界は一緒のようで、やっぱり違うんですね、と。
それ以上の言葉は出なかった。それ以下の感想もない。ただ一文にして気持ちを伝える。それだけで彼女に伝わる気がした。



