「東雲、お願い!」

私は、荷物をまとめて今にも帰宅しようと立ち上がっていた東雲の腕をつかんで、“オレ”のメアドを書いたメモを渡した。

「これを見て分かること、何でもいいから教えて!」

「え……」

東雲は、私の勢いに圧倒されてそのメモを受け取った。

「私のメル友のメアドなんだ。この人のこと、どうしても知りたいの……」

東雲は、眉間にしわを寄せて「うーん」と考えた後、

「このドメイン、どこかでみたことがあるんだけど……」

とつぶやきながら、椅子に座り直した。

大好きなPCのことだから、東雲は予想通りアドレスに興味を示してくれた。

「ドメイン?」

「……うん……。この部分のこと……」

そう言って、東雲は、メアドの@の後の部分を指し示した。

「えーと……なんのサイトだったかな……これは……」

そうつぶやきながら、大きなショルダーカバンの中からごっつい携帯を取り出す。

「何それ? 大きな携帯なんだか小さなパソコンなんだか、よく分からないよね。電子辞書?」

私が後ろからのぞき込みながらそう言うと、東雲は

「PDAと言ってくれるかな?」

と嬉しそうに答える。

「はぁ……」

東雲はPDAとは云々(よく分からないので割愛!)……を流暢に説明してくれながら、カバンのポケットから通信カードを取り出し、PDAに差し込んだ。

私は興味がないので適当に相づちを打ちながら、理解している振りをする。

東雲はそれでも話をやめない。

やっぱり、この分野になると東雲はイキイキしてくるなぁ……。