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 暑い。

 カイトは、寝返りを打った。

 しかし、妙な感触に襲われる。

 ほとんど、本能的な反応しか返さない頭が、暑い事実にエラーのフラグをあげたのだ。

 それが、ちかちかと点滅する。まるで、道路工事のランプのように。

 暑い。

 シュンッ。

 何かが、ちいさな音を立てた。

 いや、いままでずっと音が出ていたのかもしれないが、ようやくカイトの鼓膜が開いたのだ。聴覚が目覚める。

 シュンシュン。

 音は、確かにそんなことを言っていた。

 次の瞬間。


「…!」


 カイトは、がばっと飛び起きた。

 一瞬にして、目が覚めたのだ。

 意識の中で、一本の電線がようやくつながったとでも言うべきか。

 とにかく、イエロー・ランプは、レッド・ランプに変わったのである。

 思い出したのだ。

 昨日のことを。

 しかし、それは完全ではない。

 断片的で抜け落ちていて――そして、真実かどうかも分からない記憶が、頭の中で暴れている。

 具体的なことは何も考えられないというのに、怖い感じだけが彼を掴んでいたのだ。

 シュンシュンと、音を立てていたのは、やかん。

 その下にあるのは、火の入っている小さなストーブ。

 それが、彼が寝ていたベッドの方に向けて、ちょこんと置いてあった。

 暑かった理由は、これだったのだ。

 だが、ストーブなんてどうでもよかった。

 慌てて、ベッドの中を見る。

 なのに――そこには、彼一人しかいなかった。