ケーキ。

 買ってきちゃった。

 というか、何個か余ったのだ。

 売り子としての責任もあったし、何となく欲しい気持ちになって一個買ってきた。

 まだアルバイト代も出ていないというのに。

 そういう意味では、ちょっと自己嫌悪だ。
 預かったお金を使い込んでいるような気にさせられる。

 すみません。

 お金の封筒に向かって、メイは謝った。

 ストーブをつけてお茶を入れる。

 今日の夜ゴハンはパンだ。
 職場が職場だけに、売り物にならないものをもらってきたのだ。

 けれども、パンを食べる前にケーキの箱を開けた。

 白い生クリームのイチゴのケーキ。

 サンタの砂糖菓子と、メリークリスマスのチョコレートの看板。
 プラスティックのモミの木。

 ベタベタなクリスマスケーキである。

 クリスマスは、好きだった。

 父親が、知り合いのところからケーキを買ってくる。

 そして、家で2人でケーキを食べるのだ。

 父はあまりケーキを食べなかったので、ほとんどメイが独り占めだった。

 思えば。

 父のいない、初めてのクリスマスだった。

 父の買ってないケーキ。

 変な気分だ。

 誰もいないクリスマス。

 メイは、振り切るようにケーキを切った。

 お皿に乗せる。

 フォークはまだ買っていないのでスプーンですくった。

 ぱくん。

 クリスマスケーキは、何故か毎年同じ味だ。

 どこで買っても同じ味。

 でも、他の日に食べるケーキとは違った。

 クリスマス味のケーキなのだ。


 好きな人が、誰か一人でも側にいないと―― 悲しい味になる。