◎152
 ドレスは買いに行ったのかしらー。

 ハルコは、るんるーんと浮かれながらカイト宅に車を入れた。

 既にあの2人は出社しているようで、車が2台ともない。
 それを意識の端で確認した後、ガレージにいれて車を降りる。

 あら?

 そんな彼女は、足を止めた。

 バイクが、あったのだ。

 いや、バイクがあるのは当たり前だ。

 2人出かけていて、車が2台ない。

 だからバイクが余っている、のは分かるのだが。

「まさか…事故にでもあったんじゃ」

 そのバイクは、どう見てもすっ転びました、という跡を生々しく残していたのである。

 割れたカウルや、傷だらけの車体。

 走るために必要な部分が壊れているようには見えなかったので、ただの転倒だろうか。

 バイクのことにはそんなに詳しくないので、そのくらいしか判断できないけれども、ハルコは何となくイヤな予感を覚えた。

 足早に玄関に向かう。

 ガチッ。

 あっ。

 ハルコは信じられなかった。

 カギがかかっていたのだ。

 メイが来てからというもの、この家にカギがかかったことはなかった。

 少なくとも、ハルコがやってきた時に、こんな風にカギはかかっていなかったのだ。

 慌てて、合い鍵を使って開ける。

 シン、と静まり返っていた。

 前に見た時と変わらない玄関だが、何の音の名残もなかった。

 しかし、まだメイがうっかりカギをかけてしまったのだ。

 もしくは、ちょっとそこまで買い物にでも出ているのだ、と思わずにはいられなかった。