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 あんなに、あっさり受諾されるとは思ってもみなかった。

 メイは部屋に帰って、ベッドの端に座る。

 気抜けしてしまった。

 心のどこかで、彼が怒鳴ってでも引き止めてくれるのではないかと思っていた。

 そうであって欲しかったのだ。

 そんな、甘い話はなかった。

 ただ、『おいとまを』―― そう言った時、カイトがひどく苦しそうな顔をしていたのが気がかりだ。

 メイを見るだけで辛そうな表情をしていたのに、どうして出ていくと言っても、あんな顔をしたのだろうか。

 彼女は首を左右に振った。

 考えても、もう何も戻らないのだ。

 明日。

 正確には、もう今日のうちにここを出ていかなければならないのだから。

 荷物をまとめなきゃ。

 部屋を見渡す。

 何も持っていくものがないことに気づく。

 彼女は、本当に一つも持たずにここに来たのだ。

 いや、確かに最初に着てきた下着と毛皮はあった。

 しかし、どっちもずっと残しておきたいものではない。

 下着は庭先で焼いた。

 毛皮は残っているが、クローゼットの奥深くにしまっている。

 本当は焼こうと思ったのだ。

 けれども、その大きさに戸惑って、結局不透明なビニール袋に入れてしまってある。

 洋服。

 クローゼットの中のそれは、ハルコが選んでくれたもの。

 カイトが買ってくるように指示をしたのだ。