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 暗いのが怖いなら怖いと、さっさと言え。

 先を歩いてダイニングを出るカイトは、文句をシリメツレツに仕立て上げた。

 メイが皿洗いを楽しそうにしているのに腹を立てて、早く彼女を調理場から引きずり出そうとしたのだ。

 だから、あんな性急に明かりを消したのである。

 するといきなり、いぶし出されたウサギのように、穴蔵を飛び出していった。
 カイトの方が出遅れてしまうくらいの勢いで。

 そういうつもりでやったわけじゃないのだ。

 知らなかったとは言え、彼女を脅かしてしまったことに、カイトはひどい不満を覚えた。

 本当に、知らないことが多い。

 当たり前だ。

 まだ、彼女と出会って1日。
 そんな短い時間で、一体何が分かるというのか。

 時々見える断片から、カイトは彼女という輪郭を想像しなければならないのである。

 部屋に戻るために歩く自分を、追いかけてくるメイの気配は、はっきりと感じていた。

 その間にわずかでも空間があるのが、余計に苛立たしい。
 彼女の腕を掴んで、強く引っ張っていきたかった。

 けれども、またそんなことをして泣かれでもしたら。

 皿と自分に、そんなにまで格差があるかと思うと、また一段と腹立たしい。

 がんがん、と乱暴な足取りになりながらカイトは階段を上った。

 ダイニングも。
 廊下も。
 階段も。

 全部、電気をつけっぱなしのままだ。

 通り過ぎてしまえば無駄な明かりなのに、カイトはスイッチに手を伸ばそうともしなかった。

 これ以上、メイを怖がらせたくないというのもあったが、さっき自分がしくじったことへのハライセでもあった。

 しかし、ちっとも気分が晴れない。自分で自分にハライセなんかをしても、全然いいコトはなかったのだ。

 クソッ。

 自室のドアの前まで来て、カイトは足を止めた。

 勿論、いまの自分の渦巻く気持ちのせいもあったが、もう一つ、自分が何か大事なことを忘れているような気がしてしょうがなかった。

 それが分からないから、渦巻きが余計に増えていく。