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 オレぁ、ぜってー食わねーからな。

 イライラしながら、カイトはそれを思った。

 まだ目の前で、メイはぐすぐす言っているのだ。

 ここがダイニングで、テーブルの上に料理が乗っていて、いまから食事だ、という雰囲気ではなかった。

 といっても、保温プレートの上にある鍋の中身を、カイトが知っているハズもない。
 また、開ける気にもならなかった。

 勿論、この食わないというのは、断食の宣言などではない。

 彼女が手をつけない限りは、カイトだって手をつけないということだ。

 大体、何でピーピー泣きやがるんだ!

 昨日はほとんど泣かなかったというのに、今日になった途端、ボロボロと。

 確かに、彼女にとっては激動の24時間であったことは間違いない。

 しかし、カイトは全然納得できなかった。

 メー…ワクだったのかよ。

 ズシン。

 自分の心を掠めた思いに、いきなり木星にいるような気分を味わわさせられてしまう。
 地面にはいつくばらされている間に、ガニメデが頭の上を通り過ぎていくのだ。

 いつもの5倍の重力。

 そうだ。

 カイトは、一つも彼女に確認を取っていないのである。

 あの店から連れ出す時も、ここに連れてくることも、これからのことも。

 だからメイは、自分が今どういう立場におかれているのか、分からないに違いない。

 ようやくにして、カイトは彼女気持ちをわずかながら感じられたような気がしたのだ。

 しかし、迷惑だったかどうかなんて、メイに聞けるハズもなかった。

 ズシン。

 今度は、口が木星送りになる。

 もしも、そんなことを聞いて、彼女に肯定されたらどうなるか。

 ここにいるのが、イヤだと言われたら。

 カイトが、異星送りのロケットへと詰め込まれかけている間に、だんだんメイの涙は小康状態になっていった。

 もう、鼻をすする音も嗚咽も聞こえない。

 落ちついてきたのだろう。

 彼は、顔を顰めたまま立ち上がった。