翌朝は、引っ越しやのトラックの音で目が覚めた。


昨日は、あれから母と顔を合わせるのがいやで部屋に閉じこもった。


弘恵とダラダラメールしながら、千尋からの連絡を待ったけれど、いつの間にか眠ったらしい。


握りしめたままの携帯を開くと、着信・メールともにゼロ。


のろのろと起き上がってカーテンを開けると、二階の私の部屋からは、隣の家がよく見えた。


引っ越しやの男二人が、少ない家具とダンボールを家の中に納めていく。

この荷物の少なさからして、家族単位の引っ越しではない。


隣人になるはずの人間の姿は見当たらない。


『曰く付きの家』に人が引っ越してくるのは三年ぶりだった。