老犬チロと私たちの絆

「そろそろ、時間だから行くわ」


「ちょっ、まだ話終わってない…」


私の話を無視して、千尋は乱暴な運転をしながら家を目指す。


腹がたつやら、悔しいやらで涙が滲んだ。


マロンが、不安げに見上げるので、私は、大丈夫だという風に、マロンの背中を撫でる。


家の前につくと、千尋は急に優しい声音で言った。


「夏花が心配するようなことなんか、ねぇから」

強い力で肩を抱き寄せられ、キスをされると、悔しいけれど、やっぱり千尋が好きでたまらないと思った。


「ねぶた、一緒に見に行こうな?」


私は、頷いて車から降りる。


私を降ろすと、千尋はまた乱暴な運転で帰って行った。


私の見送る姿を振り返りもせずに…。