老犬チロと私たちの絆

「最近、時間作れなくてワリィ」


「本当だよ!せっかくの夏休みなのに」


私はわざとむくれてみせる。


「色々あるんだって」


「色々って?」


「仕事関係」


「飲み会ばっかじゃん!」

「仕方ないべ?先輩や親方の誘いは断れねぇんだって」


「…」


和やかだった空気がたちまち悪くなる。


近頃、千尋は飲み会にばかり参加している。休みの日も、急な仕事が入ったり、誘いが入ったりと、デートが中断されるのもしばしば。


「頑張って稼いで、冬には旅行行くべよ?」


千尋は、そう言って、私の頭を軽く撫でた。


「まじ?!」


「まじ、まじ!函館とかどう?」


「やったぁ!」


「お前、めっちゃ単純。あ、わりぃ、灰皿開けて」


そう言われ、何気なく灰皿を開け、手が止まった。


千尋の吸うタバコの銘柄とは違う、細長いメンソールのタバコが数本見えたからだ。