老犬チロと私たちの絆

人の気配と汗ばんだ不快感とで目覚めた時には、すでに夕方だった。


大志が背中を丸めながら、オレンジジュースを一心不乱に啜っている。その肉付きのいい膝にマロンがうずくまっていた。

「甘いもんばっか食ってると太るぞー」


食べかけのクッキーの箱に手を伸ばしかけた大志に忠告すると、ピシャリと後頭部を叩かれた。


振り向くと母が、寝そべっている私を見下ろしている。


「クーラーつけっぱなしで昼寝して!節約、節約」


どうりで暑いと思ったら、帰宅した母がクーラーを止めたらしい。


「暑い日にクーラーつけなきゃ、意味ねぇべよ!」


「耐えられる暑さは我慢する」


千切りにしたきゅうりや大葉をテーブルに並べながら、母が反論した。


今日の夕飯はそうめんらしい。


ここんとこ、ずっと、そうめん。


けど、文句を言えば、「ならお前がやれ」と言われるのは目に見えていたので黙っていた。


大志が、もしゃもしゃとクッキーを口に運び、こぼれたかすをマロンがこっそり食べている。