老犬チロと私たちの絆

「痛い目見ないうちに、早めに別れるんだな。さ、大志、行くよ」


「はぁ?痛い目って何よ!」


それには答えず、母と大志は出かけて行った。


ふんっ。


私は、リビングの隅っこで気持ち良さそうに眠っているマロンを無理やり起こし、膝に乗せる。


マロンは、かなり迷惑そうな顔をしたが、すぐに、私の膝の上で寝息をたてた。


父や母が千尋を好いていないのは分かっている。

それは多分、千尋が茶髪(彼は髪の毛の色をちょくちょく変える)でピアスで、高校を中退しているから…とか、まぁ、そうゆう理由だろう。


けれど、なにもフラフラしているわけじゃない。

きちんと仕事(とび職)をし、そうして稼いだお金で、車だって買ったのだから、母たちがとやかく言うことなんかないのだ。