lacrimosa








『天使のママと人間のお父さんを持つせいで、あんなに心が綺麗なバスチアンが、生まれたときからすでにもう堕天使なのが許せなかった。

だから彼が天使だったらいいのに、そう思ったんでしょう?、リュカ』


リュカは言葉がでなかった。

今まで自分が考えていたことが、誤ることなく見事に言い当てられていく。




『あの天使の絵…リュカの描いたバスチアンの絵…、あれ本当に綺麗だった』


うっとりしながらアンジェロが感嘆の息をはく。



『リュカの愛がいっぱい表れてた。僕はそれがとても、羨ましくなった』



(…羨ましい?)



アンジェロがバスチアンを羨ましいだって?

ただ自分に愛されているというだけで?




「お前は贅沢だな」

『え、』

「バスチアンはな、お前に両親を奪われてんだぞ。アンジェロはその2つとも持ってるじゃねぇか」



(…そうだよ、あいつがどれだけ寂しい思いをしてきたか)



「お前にはあいつの辛さはわかんねぇよ…」


リュカがバスチアンの寝顔を横目にポツリと言った。

アンジェロはただ、無言でそれを見つめている。




『そうだね。』

「…?」

『でも僕は、バスチアンからリュカを奪いたいと思ったんだ。大切なものを…、奪いたいって…』