キミニアイヲ.

楓は莉子の手を優しく握って、そっと体から離す。


怒ったかな……?


莉子は急に不安になりながら、振り返った楓を恐る恐る見上げる。



「楓……」


顔を見た途端に、莉子の不安は泡となって消えていった。


悲しくて辛そうな表情をしていた楓は、今まで見たことがないくらいの優しい微笑みを見せていたから。



それはまるで、真っ暗で寒い冬空の下で孤独にたたずんでいた草木が

夜が明けて、暖かい春の日差しに触れて花を咲かせたかのようだった。