「…失礼します」



無表情のまま俺の隣に収まると、マニュアル通りの作業をこなしてゆく



「お飲み物、どうされます?」


「えっ?」



「グラス。シャンパンも、焼酎もないから」



「ああ、シャンパンはもういいや…緑茶で割って」





ビーズやスパンコールの装飾が付いた白いロングドレスは、彼女が腕を世話しなく動かす度にグラスの水滴に反射する



小さな顔に、細く尖った顎が目に付く


対照的に身体は全体的に肉付きがあり、緩いカーブを描いたラインを背中一面に描いていた



「…背、高いよね。何センチ?」



「170センチ。ガタイ良くて女の子扱いされないの、あたしも一杯頂いていいですか?」



「うん。飲みなよ」



「じゃあ黒霧もらうね。てゆーかお兄さんも背ぇ大きいですよね、はいどーぞ」


「まーね。お疲れ」



キン、とグラスのぶつかり合う慣れ聞いた音が妙に小気味良く鼓膜に響く


そしてお互いがお互いのグラスに口を付ける


「…あーおいしー!あたしお酒大好きなの、やっと飲めたわっ(笑)あ、マナミです宜しく」




(…笑った)



この席に"マナミ"が付いて5分程経ってから、彼女は漸く口角を上げ目を細めた。


「なんで?指名いないの?」

「入ったばっかだからさ。マナ、先月昼の仕事辞めたばっかなのに早速ここが2店舗目(笑)」


「アパレルか美容部員とかっしょ」


「…なんでわかんの!?」



「いや、もうキャバ嬢っぽくないじゃん、だって。態度もさ(笑)つーか、ハーフ?」


「ハーフ違うから〜良く言われるけど。つか態度とか酷くない?(笑)」


「えー出身どこよ?絶対なんか入ってるって!どっかの血!」











気付けば






いつもよりも饒舌に、そして口説くかのような探った質問ばかりしていた自分に








まだ戸惑いを感じることはなかった。