急に口を開いた水川真梨の震えた声に体が少し反応した。
「あんなこと言われたの初めてだったの」
ポツリポツリ、言葉を紡ぐ。
「自分でも馬鹿みたいって思うんだけど…嬉しくて」
「う、ん」
「本当に嬉しかったの」
そう言って、顔を上げると柔らかく微笑む。
「名前を呼ばれて嬉しいなんて思ったのも、今日が初めて」
名前…?
「虎太郎が朝呼んでくれた時も、さっき蓮が呼んでくれた時も、馬鹿みたいに嬉しかった」
「……」
「でも…無理矢理呼ばせても、意味ないよね」
寂しそうにまた笑う姿に、胸が痛くなる。
蓮さんか、虎太郎か。
どちらが何を言ったのかはわからないけれど、名前を呼んでもらうことが嬉しいってことはわかる。
やっぱり寂しそうな水川真梨になんて声を掛けていいのかわからない。
どうしたら笑ってくれるのか。
どうしたらそんな顔をさせないで済むのか。
名前を呼びたくない、なんて。
ただの足掻き。
そこまで水川真梨にハマりたくないと思う、馬鹿な俺の最後の足掻きだ。
「寂しい?」


