愛して。【完】






「そんなこと言ってる場合じゃないだろ…?」


「そんなことじゃないから」




そう言って、水川真梨は俺を見上げる。


本人は睨んでるつもりなんだろうけど、逆効果。


目も潤んでて、上目遣い。


誘っているようにしか見えない。


その目から逃れるように、顔を背けた。




「ちょっと光、そっち向かないでよ…」




するとなぜか急に弱気になった水川真梨が俺のシャツを引っ張った。




「おい?」


「……」


「水川真梨?」


「……」


「聞いてんのか?」


「……」


「おー「煩い」




いきなり遮られた声に、はぁ?と少し大きく低い声が漏れる。


ピクリと水川真梨の体が揺れた。




「あ、ごめん…」




今の水川真梨には、あんな声も恐怖の対象にしかならないようだ。




「……」


「おい?」


「……名前で呼ぶまで口きかないって言ったでしょ」




体の震えも止まらないまま、強気にそんなことを言う。


それに、今更だろ。


口きかないって…さっきまで普通に話してたのに。


だけど、妙に健気に感じるその姿は、俺の心を温かくさせた。