少し星宮の抱きしめる腕が強くなる。
星宮の胸に顔を押し付けられて、柑橘系の香りが鼻を擽った。
「真梨ちゃん……」
名前を呼ばれるけど、答えない。
だって、思ってしまったから。
“あたしが欲しいのは、この温もりじゃない”
そう、思ってしまったから。
漂う柑橘系の香りは、あたしが求めてる香じゃない。
あたしが知ってるのは、もっと甘くなくて、少し鼻がツンとして。
抱きしめる腕は確かに筋肉が付いているけど細身で、あたしの求めてる腕じゃない。
あたしが知ってるのは、筋肉質で少し太くて、でも付き過ぎてなくて。
名前を呼ぶ声は男にしては少し高くて少し丁寧口調で、あたしの求めてる声じゃない。
あたしの知ってるのは、低くて甘くてもっと命令口調で。
「蓮……」
あたしが求めてるのは、蓮の温もりだと思い知る。
蓮に会いたいと、無性に思ってしまった。
自分でも馬鹿だとわかっているけれど。
ありえないと思っているけれど。
心の奥底で蓮を求めてしまったんだから、仕方がないのかもしれない。
「真梨ちゃんは、志摩が好きなんだね」


