「でも、それを聞いた時…奇跡だと思った。まともに飯を食ったことが無いのに、栄養失調で済んだのは、確かに奇跡だった」
親父の言葉が、重くのしかかる。
確かに、奇跡なのかもしれない。
変な病気にもならず、そこまで生きてこれたのは。
「でも…今も、あまり変わってないらしいな」
「……」
蓮も俺も、言葉を発せられなかった。
飯を食ったことが無い、と言うのも確かにショックだったし、それに真梨の食べる量は昨日にしたって一昨日にしたって、極端に少ないのだ。
今日だって、まだ何もお腹に入れていないはず。
「変わったのは、目か」
「目…?」
「あぁ。前は死んだような目をしていたからな。現実に苛まれた、地獄を見たことのある様な目だった。
今は…多少、変わったようだが。お前らが変えたのか、女の子が変えたのか…どちらかは知らないが」
その言葉に、首を振る。
俺達は、何もしていない。
真梨の目が変わったらしいのは、その女の子のお陰だろう。
「そんなに頑なに否定しなくてもいいだろう。少なからず、お前等も関わっているんだろうから」
「ありえねぇよ…」
俺の呟きに気付かないふりをしたいのか、親父はそこから立ち上がる。
「さて、そろそろ診察も終わるだろ。言いたいことも言ったし…」
「親父、」
「あ、そうだ」
俺が呼び止めたのまで無視して、親父は言葉を紡ぐ。


