目の前に立つ人物は、俺より少し年上だろうか。
色んな意味で無茶苦茶な奴だ。

「無理がありますよ」

とりあえずこう言う。
すると1歩近づいて、

「前世の、です!前世で俺はあなたの娘でした!」

もう少し距離が近かったなら、
掴みかかられそう、というか揺さ振ってきそうな勢いで彼はそう言った。

色々と突っ込みたい事もあるけど、
とりあえず怪しい人物は無視して先へ急いだ。

横に逸れた俺に近づいて、
そのおかげでどうにかすれ違える幅が出来たから。


彼の横をすり抜けて行こうとすると、
まあ、そうなるよな。
思ってはいたけれど、腕を掴まれ阻止された。


「折角また会えたんだから、
お願いだから、親孝行させて!母さん!」


どうしよう。

縋るような声で叫ばれて、俺は困り果てた。



「あの、とにかく俺今急いでるんで、
人待たせてるんで、離してくれませんか?」

「わかりました。俺もついて行きます!」

わかってないだろ。

……本当、どうしよう。


腕を掴まれたまま、目的地へ向かう事になった。