僕の耳に聞こえたのは、彼女の寝息だった。

何だ、昼寝か。

それなら気づかないのも当たり前か。

僕はカバンを床のうえに置くと、自室へ向かおうとした…が、ふとソファーに視線を向けると、そこに水萌のカバンがあった。

全く、だらしがない。

昼寝する前にカバンを置きに行け。

仕方なく彼女のカバンを手に持つと、僕は姉の自室のドアを開けた。

そう言えば…と、僕は思った。

姉の部屋に入るのは、今日が初めてだった。

静岡の実家から離れたことを機に姉弟2人で住むことになった家だけど、特に目立った干渉もなければお互いの部屋にも入ったこともなかった。