「イル、行ってくれ」 『うん、わかった』 イルはすでに藤丸から口に出さずに会話をしたのか、俺と玲哉を背中に乗せると地面を蹴った しばらくモノクロの空を飛んでいた俺たち その時俺は異変に気づいた 「おい、イル こっちはマンションの方向じゃねえぞ」 「間違ってねーよ 俺がこっちに用があるんだ」 「え?」 口を開いたのは玲哉だった いつもと変わらない感情のこもらない眠たそうな瞳 藤丸を見ると、わずかに眉を動かした 一体何が始まるんだ……? 俺は殺伐とした不安にかられた