そっか、郁は

キョンが好きなんだって



気付いたのに


そのときすでに、もう遅かったのかな



郁にはなにもできなかったから



ただ隣にいて、他の女の子に

近寄らないでって見せつけることしかできなかった


だって、壊れてしまうのがこわかった


もし郁が


この気持ちを言ってしまったら


キョンはこうやって隣にいてくれなくなるんじゃないかなって。



だったら、なにも言わないで



隣にいたかった。



だから、あの日


目が覚めるとキョンがそばにいてくれたことが


どうしようもなく嬉しかったんだよ


もう、このままでいいって


そう思えた。


こうやってキョンのそばに
郁がいれば


それだけでいいって。



なんでもよかった。


ただキョンが隣にいてくれる


理由が欲しかった




たとえそれが、



嘘だとしても。