「このまえ

手、握ってくれたから…」


「あ…まあ、あれは」


だからなんだっていうんだよ


なんでそんな、期待させるようなこと。



「っていうか、模造紙見つかったし!

あれは?黒いガムテープ!」



「誤魔化すつもりなんだ」


人を煽るのは得意だ。


特に藤原さんはよくひっかかる。


「誤魔化すとかそういうわけじゃ…!」


「じゃ、じっとして」



なんで、手に触れたかなんて


聞かないよ


少しでも期待してはいけないのに


でも今の俺は、

気持ちを抑えることを知らない。



「や、仲本っ…!!」


暗がりの中で


藤原さんを強く抱き締めた。



苦しくなればいいんだ


俺だって、
苦しいんだから



悲しみを分け合うことなんて


できない


お互いに傷ついているから


でも、その痛みならわかってあげられる。