もう時計は六時半を回っていて、 生徒のほとんどが もう帰っていた。 教室に残るのは、 帰る支度をしている子たちと 私と、先生。 「じゃあ、香織ちゃん、ばいばい」 そんなふうに手をふってもらえるようにまでなったのも 文化祭っていう行事のおかげ。 「うん、ばいばい」 その子たちがいなくなると、 教室は一気に沈黙に包まれた。 聞こえるのは、私の持つ太い筆が 看板に色を付けるときに滑る音だけ。 「…なあ、藤原」 沈黙に耐えかねたのか 先生が口を開いた 「…うん。」